環境保全と農業

日本の農業の役割

輸送に伴う環境コストなど、環境への悪影響の観点から、
日本の食料自給率や国産食材の重要性を食育の一環として勉強してきました。
ここでは、環境作り、環境維持、向上の観点から、
日本の農業の役割を考えてみたいと思います。

農業の役割、機能と言えば、農産物を生産すること。
他に何かあるんですか、という答えが聞こえてきそうです。
もちろん、それだけではありません。古くから農耕民族として、
農村社会を築き上げてきた日本国。
米作りの歴史は、弥生時代に遡ります。

現代社会では、工業や製造業、ITビジネスなどが隆盛ですが、
古来の日本は、生活の基盤が農村にありました。

近代化して社会構造が変わってしまった現代においても、
農村の存在は非常に重要といえます。
食料自給率に関わるから?

それだけではありません。
農村は、日本の風土を維持したり、
自然災害から地域を守るために、なくてはならない存在なのです。

食料を国民に供給するという重要な役割を果たし、次のような機能を担っているのです。
持続的な食料供給ができる基盤を維持することで、
国民の現在および未来を保証し、安心を与え、命の源、エネルギー源を生産しています。

農業的土地利用が物質循環系を補完し環境を保全し、
水循環の制御による地域社会の安全や環境維持を担っています。

例えば、農村にある水田、田畑、森林を通じ、大量の雨が降った場合でも、
植物や、根、土が水を吸収し、水が一気に流れこまないように機能し、
洪水の発生や土壌侵食や土壌の流出を防止しています。

同様に、地下水の涵養、水を少しずつ流出させることによって
河川流況の安定を図り、土を固めた畦を通して土砂崩れを防止しています。
環境への負荷の除去・緩和の機能を果たしています。

例えば、水田での水質の浄化 、有機性廃棄物の分解、大気の浄化、
水田の水面から蒸発散を行い気温上昇の防止、つまり地球温暖化防止にも繋がっています。
自然の形成・維持の機能を果たします。

水田や畑、森林の維持は、生物生態系を保全したり 、野生動物の保護、
土地空間の保全、みどり空間の提供、日本の原風景の保全に繋がっています。
生産・生活空間の一体性と地域社会の形成・維持の機能を果たしています。

地域社会・伝統文化の形成・継承・振興・維持、伝統的な祭り、
郷土料理などの継承という重要な役割があります。

最近では、都市的緊張の緩和の機能に期待が集まっています。
自然に触れての農業体験やトレッキング、グリーンツーリズムなどを通じた、
現代生活にストレスを抱えた方たちの人間性の回復や休息の場、
安らぎを与えることが可能です。

農業体験と食育

そして、いわゆる食育の場。
自然体験学習、農村漁村留学などを通じて人を教育する機能を果たします。
特に、学校や保護者たちが子供の参加に積極的意欲を示している農業体験。

参加した子供たちは、田植え、草取り、収穫など一連の作業を体験することで、
食料生産がいかに大変なものであるか、農家の方への感謝の気持ちや、
食べ物へのありがたみが分かり、食べ物を粗末にすることをしなくなるといいます。

食卓の上に出される食べ物しか知らなかった子供たちにとって、
とても貴重な経験ができるのが農村です。このように農村、農村が抱える田畑や森林は、
我々の国土を維持し、文化を守っていくうえで、とても重要です。

食料の生産という側面だけでなく、環境保全や自然災害からの防御、
都会と農村との交流を通じた人々の精神面の安定に至るまで、
農村は重要な存在として機能しているわけです。

しかし、現代では、耕作放棄地といって、
作物が栽培されないまま放棄された農地が増大しています。

これらの農地は、上記のような重要な役割を果たすことができません。
昨今の異常な気温上昇による猛暑や、台風などで河川が氾濫したり、
土石流によって大きな被害が生じているのは、
田畑や森林が減ってしまったせいかもしれません。
我が国の農業をいかに維持、復活させていくかが大きな課題となっています。